この記事では、BAX EQの魅力を紹介し、アナログモデリングのプラグイン版を使ってDTMでの具体的な活用テクニックを解説します。
名前とは真逆の繊細な効き具合
ミックスを完成させた後、最後に音のバランスを整えるマスタリング。この工程でEQをかけるのは、繊細かつリスキーな作業です。少しでもやりすぎると、音が硬くなったり、耳に刺さるような不快なサウンドになったりしてしまいます。
「Dangerous Music BAX EQ」は、そんなマスタリングの悩みを解決するために生まれたプラグインです。その最大の特長は、どんなに大胆にノブを回しても、決して音が破綻しないこと。なぜなら、一般的なEQとは根本的に設計思想が異なるからです。
マスタリングに革命を起こした音楽的トーンシェイパー
一般的なEQは、特定の周波数帯を「ブースト(持ち上げ)」したり、「カット(削り)」したりすることで音色を調整します。しかし、この方法では音の位相がずれてしまい、特に広範囲に調整すると音が不自然になったり、バランスが崩れたりすることがあります。
BAX EQは、そのような位相の歪みを最小限に抑えるために、特殊な「BAX回路」を採用しています。これは、シェルビングEQをベースに、緩やかで広い帯域をコントロールすることで、極めて自然な音色補正を可能にしています。
この設計のおかげで、音の土台となる低域をしっかり整え、聴感上は音をほとんど変えることなく、高域にシルキーな輝きを加えることができるというのがコンセプトです。
BAX EQプラグイン活用術
▶メーカーサイト:https://www.plugin-alliance.com/en/products/dangerous_bax_eq.html
BAX EQは、ミックスがほぼ完成した状態の2Mix(ミックスバス)にインサートして使うのが基本です。もちろん、「常にこれが正しい!」という訳ではありませんが、具体的な設定を参考までに紹介します。皆さんが使用する際のスターティング・ポイントとしてご活用ください。
1. マスタリングで重要な「超低域の整理」
音の濁りの原因となる超低域をカットし、全体をタイトにします。
Low-Cutノブ
30Hzに設定することが多いです。これにより、耳には聴こえない超低域のノイズ(空調音やマイクのランブルノイズなど)をカットし、クリアな空間を確保します。
音楽的なタイトさが欲しい場合は、40Hz〜50Hzに設定してみましょう。キックやベースのアタック感を損なうことなく、全体的なローエンドが引き締まります。
2. マスタリングで「音に磨きをかける」高域処理
ミックスに抜け感や煌びやかさを与え、音の「鮮度」を高めます。
High Frequencyノブ
- 10kHzはボーカルやスネアの倍音成分に温かみと滑らかさを加えることができます。
- 18kHzはミックス全体に透明感と輝きを与えます。特に「+0.5dB」など、ごくわずかにブーストするだけでも、聴感上の印象は大きく変わります。
3. 「低域の質感」をコントロールする
BAX EQの低域コントロールは、単に音量を調整するだけでなく、低域の「質感」を音楽的に変えることができます。
Low Frequencyノブ
- 70Hzを-0.5〜-1.0dBカットすると、キックやベースの音はそのままに、低域全体のぼやけた部分だけが取り除かれ、タイトなサウンドになります。
- 100Hzを+0.5dB程度ブーストすると、聴感上の音圧や迫力を損なうことなく、低域に温かみのある太さを加えることができます。
ミックスマスタリングを外注するなら
BAX EQプラグインは、マスタリング作業を劇的に変える強力なツールです。
「マスタリングを自分でしたけど、音圧が足りない…」
「どのノブをどのくらい回せばいいのか分からない…」
そんな時は、ぜひ一度MASTER SOUNDのオンラインミックス・マスタリングサービスをご利用ください。