ミックスが終わって、いざマスタリング。しかし、音圧を上げると音が潰れてしまったり、楽曲全体のバランスが崩れてしまったり…。そんな経験はありませんか?
「Shadow Hills Mastering Compressor」は、アナログマスタリングの現場で「最終兵器」と称される伝説的なコンプレッサーです。その最大の特徴は、「2つのコンプレッション回路」と「3つの出力トランス」を組み合わせることで、他では得られない、唯一無二のサウンドを作り出せる点にあります。
この記事では、このプラグインのマスタリングに特化した独特な機能を紹介します。
Shadow Hills Mastering Compressor とは?
Shadow Hills Mastering Compressorは、その名の通りマスタリングに特化して設計されたアナログハードウェアで、実機は入手困難な最高峰のマスタリングコンプレッサーです。プラグイン版は、その複雑なアナログ回路とサウンドを忠実に再現しており、DTM環境でもプロレベルの音作りを可能にします。
▶メーカーサイト:Plugin Alliance Shadow Hills Mastering Compressor
スムーズで自然な音圧
このコンプレッサーは、音圧を最大化する際に音の透明感を損なうことなく、非常にスムーズで自然な音質を維持します。
トラック全体に安定したエネルギー感を与えるため、マスタリングプロセスにおいて非常に重宝されます。
モードを使いこなせばマスタリングに最強
その名の通りマスタリングに特化したコンプレッサーですが、ミックスバスや個別のトラックにも非常に有効なツールです。その最大の特徴は、OpticalとDiscreteという2つのコンプレッサーと、3つのトランスフォーマー(Nickel, Iron, Steel)を組み合わせることで、非常に幅広い音作りができる点にあります。
マスタリングでの基本セッティング
以下の要素の組み合わせにより、「サウンドキャラクターを積極的に変える」という、マスタリングでは非常に珍しいアプローチが可能です。
- Optical Compressor(光学式コンプレッサー)
- Discrete Compressor(ディスクリート・クラスAコンプレッサー)
- 3種類の出力トランス(Nickel、Iron、Steel)
2つのコンプレッサー回路を使い分ける
OPTICAL(光学式)とDISCRETE(ディスクリート)という2つのコンプレッサー回路をそれぞれ独立して、または組み合わせて使うことができます。
OPTICALの特徴
非常に滑らかで、アタックやリリースが自然にかかります。音量の大きな部分にだけ柔らかくコンプレッションをかけたい場合に最適です。
セッティング例
Ratioは2:1、AttackはSlow、ReleaseはMediumあたりが基本です。ゲインリダクションは-0.5dB〜-1.5dB程度に設定し、音圧を稼ぎながらも、音のピークを優しく抑え込みます。
DISCRETEの特徴
よりアグレッシブで、パンチのあるタイトなサウンドにしたい場合に最適です。アタックやリリースのレスポンスが早く、キックやスネアの音を際立たせることができます。
セッティング例
Ratioは2:1、AttackはFast、ReleaseはFastあたりが基本です。ゲインリダクションは-1dB〜-2dB程度に設定し、音のグルーヴ感を強調します。
3つのトランスで「音の質感」を変える
Shadow Hillsプラグインの強力な機能が、出力回路に「Nickel」「Iron」「Steel」という3種類のトランス(変圧器)をシミュレートしている点です。
NICKEL(ニッケル)の特徴
最もクリーンで、透明感と滑らかな高域が特徴です。繊細なポップスやアコースティック曲のマスタリングに最適です。
IRON(アイアン)の特徴
中域にフォーカスした、温かく力強いサウンドになります。ロックやR&Bなど、ボーカルやギターの存在感を際立たせたい場合に有効です。
STEEL(スティール)の特徴
最もアグレッシブで、ローエンドにパンチと厚みを与えます。ヒップホップやEDMなど、太い低音が重要なジャンルに最適です。
ステレオとモノモードの切り替え
Shadow Hills Mastering Compressorは、ステレオとモノモードを簡単に切り替えることができ、マスタリングの精度が求められるジャンルにも対応します。モノモードでの使用により、低域のパンピング感を排除した音作りもできます。
プラグインだからできる必殺の多段コンプ
マスタートラックにShadow Hillsを2つ挿し、1つ目はOpticalでピークを整える役割、2つ目はDiscreteで音色を整えたり、締める役割と分ける方法も効果的です。
ミックスマスタリングを外注するなら
Shadow Hillsは非常に強力なツールですが、繊細なセッティングが求められます。ゲインリダクションは控えめに、-1〜-2dB程度を目安に、音を「潰す」のではなく「整える」イメージで使うのが成功の鍵になります。
ミックスマスタリングの外注をお考えの際は、MASTER SOUNDのオンラインミックス・マスタリングサービスをぜひご検討ください。