ボーカル録音の基本|マイク距離20cmとゲイン設定【音割れ・こもりを防ぐ】

ボーカル録音用のコンデンサーマイクのイメージ

「録ったボーカルがこもる」「サビで音が割れる」「ミックスでうまく整わない」
そんな宅録の悩みは、機材ではなく、録音時の2つの設定で解決することがあります。

具体的には、次のとおりです。

  • マイクとの距離は、約20cm
  • 入力ゲインは、ピークが−12〜−6dBFSに収まるよう調整する

執筆は、MASTER SOUNDでミックス・マスタリングを手がける、プロ歴20年以上のサウンド・エンジニアです。

項目

目安

マイクとの距離

約20cm(ポップフィルターはマイクから約10cm、歌い手はそこからさらに約10cm)

入力ゲイン

一番声が大きい部分で、ピーク−12〜−6dBFS(クリップは不可)

波形が小さくても問題ありません。
音量と音圧は、録音ではなく、ミックス・マスタリングで作ります。

※声量、声質、ジャンル、マイクの種類で最適な値は変わります。
まず、この目安から試してください。

ボーカル録音のマイク距離は何cm?目安は約20cm

宅録する時のマイクとの距離を示すイメージ

マイクと口元の距離は、約20cmが目安です。
近接効果が出すぎず、声の質感も保てる距離だからです。 まず20cmで試し、こもると感じたら、少し離してください。

歌い手とマイクの距離20cmは、ポップフィルターで保つ

次のように設置すると、約20cmを保てます。

  • ポップフィルターを、マイクから約10cm離して置く
  • 歌い手は、ポップフィルターから約10cm離れて立つ

ポップフィルターは、破裂音(パ行・バ行のボッという音)を防ぐだけでなく、「これより前に出ない」という目印にもなります。

マイクに近づきすぎると、近接効果が起きる

カーディオイドなど指向性のあるマイクは、音源に近づくほど低域が強くなります。これが「近接効果」です。

  • 声が太くなり、こもる
  • 低域が膨らみ、EQで直しにくくなる
  • 声本来の質感が変わる
  • 体の動きで、音量が大きく変わる

身体の揺れは、マイクとの距離で音量差に変わる

マイクは、音源から離れるほど音が小さくなります。距離が2倍になると、約6dB小さくなります。 逆に言えば、近いほど、わずかな動きが大きな音量差になります。

距離の変化

音量の変化(目安)

5cm → 7cm

約2.9dB

20cm → 22cm

約0.8dB

同じ2cm動いても、5cmでは約3dB、20cmでは1dB弱の揺れです。 サビで体が前に出ても、20cmなら音量の差が小さく収まります。歌い手も、身構えずに自然に歌えます。

※理論値の目安です。実際は近接効果で、低域の変化も加わります。

マイクの高さは、グリルを口元に合わせる

マイクのグリルの位置が、口元の高さに来るように調整します。 高さがずれると、収録される音の帯域が変わるためです。

マイクの種類で、録音に適正な距離も変わる

マイクの種類

距離の目安

15〜20cm前後
(本記事は20cmを基準にしています)

機種の推奨距離に従う。コンデンサーより近めが目安

ダイナミックマイクにも近接効果があります。迷ったら、10cm前後から試し、こもる場合は少し離してください。

※距離の目安は、解説によって幅があります。まずは機種の説明書を確認してください。

ボーカル録音のゲイン設定|ピーク−12〜−6dBFSに合わせる

ボーカルを録音する時に、インターフェースのゲインはどこまで上げて良いのか迷ったりしていませんか?

曲の中で一番声が大きい部分で、ピークが−12〜−6dBFSに収まる位置に合わせましょう。

※dBFSは、デジタルの上限(0dBFS)からの差を表す単位です。

ボーカル録音時の入力ゲインの合わせ方

  • 曲の中で最も声が大きい部分(サビ、一番高い音の歌詞など)を、本番のつもりで歌う
  • 歌いながら、インターフェースのゲインを調整する
  • ピークが−12〜−6dBFS程度で、クリップしていないか確認する

この合わせ方なら、小さい部分も安全に録れます。音量のムラは、ミックスで整えられます。

音量を上げすぎると、あとから直せない

デジタルのクリップ(音割れ)は、音量を下げても元に戻りません。 クリップは、DAWの画面だけでなく、インターフェースの入力段階でも起こります。クリップ表示(赤いLEDなど)が点灯していないかも確認してください。入力で割れた音は、DAWのフェーダーを下げても戻りません。

小さすぎても、ノイズが目立つ

波形が小さくても問題ありません。ただし、ピークが−20dBFSを大きく下回ると、ミックスで持ち上げたときにノイズも一緒に大きくなります。その場合は、少しゲインを上げてください。24bitで録音すると、余裕を持って録れます。

波形で、失敗を見分ける

クリップが分かるオーディオの波形

波形の状態

見た目

対応

クリップ

山の頂点が平らに潰れている

適正

ピークが−12〜−6dBFS前後

小さすぎ

ピークが−20dBFSを大きく下回る

録音時の入力レベルと、完成した音源の音圧は、別のものです。音圧の作り方は、音圧が小さい原因と直し方で解説しています。

ボーカル録音のやり方|宅録の8ステップ

答えは、次の8ステップです。

  • STEP1
    マイクを、動かないよう固定する。グリルを口元の高さに合わせる
  • STEP2
    ポップフィルターを、マイクから約10cm離して置く
  • STEP3
    歌い手とマイクの距離を、約20cmに調整する
  • STEP4
    曲で最も声が大きい部分を、本番のつもりで歌う
  • STEP5
    4の声量に合わせて、インターフェースのゲインを調整する(24bitで録音)
  • STEP6
    ピークが−12〜−6dBFS程度で、クリップしていないか確認する(インターフェースのクリップ表示も)
  • STEP7
    数フレーズ試し録りして、歪み、ポップノイズ、部屋鳴りを確認する
  • STEP8
    本番を録音する。音量の調整は、ミックスで行う

ボーカル録音で音がこもる・割れる原因と対策

症状

主な原因

対策

こもる

約20cmに離す。

声がぼやける

壁や角から離れる。
カーテンや毛布で反射を減らす。

割れる

ピーク−12〜−6dBFSに下げる。

ボッという音が入る

ポップフィルターを使う。
口の真正面から少しずらす。

音量にムラが出る

立ち位置に目印をつける。
ポップフィルターを目安にする。

※部屋鳴り対策の効果は、部屋の広さや素材で変わります。 録音側を直しても残る「こもり」は、ミックスでの調整が必要です。音がこもる原因と直し方|DTMミックスの7つのチェックを参考にしてください。

ボーカル録音に必要な機材|宅録で買い足す順番

設定と環境を見直しても音質が改善しない時だけ、効果の大きい順に買い足しましょう。

1. コンデンサーマイク

WARM AUDIO / WA-8000 真空管コンデンサーマイクWARM AUDIO / WA-8000 真空管コンデンサーマイク

AKG P420 コンデンサーマイクAKG P420 コンデンサーマイク

2. オーディオインターフェース

FOCUSRITE Scarlett 4i4 (gen. 4) オーディオインターフェイス

FOCUSRITE Scarlett 4i4 (gen. 4) オーディオインターフェイス

RME Babyface Pro FS オーディオインターフェイスRME Babyface Pro FS オーディオインターフェイス

3. ポップフィルター

MXL SMP-1MXL SMP-1

SHURE ( シュア ) / SM7BSHURE ( シュア ) / SM7B

4. マイクスタンドまたはアーム

マイクを固定し、距離を安定させます。立って使用するものと、デスクに固定できるもので安定性の高い個人的なおすすめを紹介します。TAMA MS205BK ブームマイクスタンドTAMA MS205BK ブームマイクスタンド

CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CDA50BKCLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CDA50BK

5. 密閉型ヘッドホン

Sony MDR-CD900ST 密閉型スタジオモニターヘッドホンSony MDR-CD900ST 密閉型スタジオモニターヘッドホン

ボーカル録音の質は、ミックスにどう影響する?

ミックスでできる処理の幅が変わるので、素材に次のような問題があると、できる処理が狭くなります。

  • クリップによる歪み(あとから直せません)
  • 近接効果による、低域の膨らみ
  • 大きな部屋鳴り
  • 不安定なマイク距離
  • 強いポップノイズ

適切な距離とゲインで録れた素材なら、EQやコンプレッサーの自由度が大きく上がります。

曲の中で一番音量が大きくなるのは、多くの場合サビです。メロディの音域が高く、声量も上がりやすいためです。特に、一番高い音の歌詞は、そこを実際に歌ってゲインを確認してください。

ミックスのご依頼で受け取る素材で最も多いのは、ポップノイズです。ポップガードは低価格で購入できるものもありますので、是非導入を検討してみてください。

ミックス依頼前の、ボーカル録音データのチェックリスト

データのチェックは、次の5項目です。

  • エフェクトを外して書き出す
  • 24bit WAVで書き出す
  • ノーマライズやリミッターはなし
  • ファイル名を整える
  • 開始位置をそろえる

詳しい準備方法や複数トラックをまとめて書き出す方法は、パラデータとは?ステムデータとの違いと書き出し方で解説しています。

依頼先の選び方は、ミックスとマスタリングの違いと必要な理由を参考にしてください。

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ボーカル録音のFAQ

距離は、必ず20cmにしなければいけませんか?

目安です。声量やマイクの種類で、最適な距離は変わります。まず20cmで試し、こもると感じたら、少し離してください。

ポップフィルターがないときは?

破裂音が入りやすくなるため、用意することをおすすめします。応急処置としては、マイクの位置を、口の真正面から少しずらす方法があります。

録音したあとで、クリップに気づいたらどうすればいいですか?

取り直すのが基本です。修復ツールで軽減できる場合もありますが、完全には戻りません。ゲインを下げてから録り直してください。

録音のビット深度は、何ビットがいいですか?

24bitをおすすめします。16bitより余裕を持って録音できるため、ゲインを控えめにしやすくなります。

ヘッドホンの音がマイクに入ってしまいます。

密閉型のヘッドホンを使い、音量を下げてください。それでも入る場合は、ヘッドホンの位置を調整します。

コーラスやハモりも、同じ距離で録りますか?

同じ距離、同じゲインで録るのが基本です。距離が違うと音質が変わり、ミックスでそろえにくくなります。

サビは声が大きく、Aメロは小さい曲です。ゲインはどこに合わせますか?

最も声が大きい部分に合わせます。そこでクリップしなければ、小さい部分も安全に録れます。小さい部分の音量は、ミックスで整えられます。

まとめ:録りの2設定が、ミックスの出発点

  • マイクとの距離は、約20cmに保つ
  • 入力ゲインは、ピーク−12〜−6dBFSに収める
  • 音量と音圧は、ミックス・マスタリングで作る

まずは、今の環境で、距離とゲインを見直してみましょう。

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本記事は、ボーカル録音の基本設定(マイク距離・入力ゲイン)を解説した動画(Recording Great Vocals In Two Steps – TheRecordingRevolution.com)を参考に、MASTER SOUND編集部が、音楽制作者・DTMユーザー向けに、ミックス・マスタリングの現場での経験を加えて再構成したものです。

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